「アザミの花は夜を待って開花する」と思い込んでいる人が、少なからずいるようです。
しかし結論を簡単にいうと、この思い込みは完全に間違っています。
アザミの花は、夜に咲きはじめるようなことは全くありません。
昼間においても美しい花を咲かせ続けて、私たちを楽しませてくれます。
そもそも、いったいなぜこのような誤解が生まれたのでしょうか?
アザミの花は、本当はいつ咲くのか?
アザミの花は、春から秋にかけて咲きます。ただし厳密にいうと、品種によって咲く時期は異なります。
最も一般的なノアザミは春から秋にかけて花をつけます。ノアザミから品種改良した園芸種のドイツアザミは、春から夏のはじめにかけて花が咲きます。その他多くの野生種のアザミは、夏の終わりから秋にかけて花をつけるのが普通です。
アザミは日光の下で咲く花です。月下美人のように夜に開花して朝になるとしぼむ、ということは、絶対にありません。
「アザミの花が夜咲く」理由
「アザミの花は夜に咲く」というイメージには、ある歌が大きな影響を与えているようです。それは1975年9月にリリースされた、中島みゆきのデビューシングル「アザミ嬢のララバイ」です。この曲は彼女のファースト・アルバムである「私の声が聞こえますか」にも収録されています。
この曲の歌詞には「そしてあたしはいつも夜咲くアザミ」というフレーズが繰り返し使われています。中島みゆき自身はこのフレーズについて、アザミは一見針に包まれて強そうに見えるが、実際はもっと弱々しいのではないかとコメントしています。そしてこの曲がララバイ(子守唄)であるのは当時の状況(父親の病気)に由来する不安から逃げたい気持ちが関係していると、語っています。
このララバイは、決して母親が幼い子どもを寝かしつける目的で歌う曲ではありません。
主人公が自分を「夜咲くアザミ」にたとえていることにも、深い意味をくみ取ることができます。
アザミは本来昼の陽光の下で咲く花で、触ると痛いトゲもあります。これは彼女が本来存在するべきでない場所で活動し、しかも心がささくれた状態になっていることを暗示していると解釈できます。
ひょっとしたら、主人公は夜に働く水商売の女性なのかもしれません。
この曲は、孤独な主人公が現在付き合っている男性に対して、淋しさのあまり心身の慰めを求めて「眠れないのなら訪ねてきてね」と誘いかけている歌なのです。
そして主人公の現状をひとことで説明するために「夜咲くアザミ」というインパクトのある単語を、中島みゆきさんは使っているのです。
【まとめ】
アザミは太陽の下で咲く花です。
にもかかわらず、一部の人は「アザミは夜に咲く花」であると思いこんでしまっています。これは1975年にリリースされた中島みゆきの「アザミ嬢のララバイ」が関係していると考えられます。