ユダヤ・キリスト教において、アザミはアカンサスやイバラをはじめとする「棘のある植物」として、イエスの受難の原因である罪の呪い、聖母マリアの悲しみの原因の象徴として、宗教画などに描かれてきました。これらをはじめとする棘を持つ植物は、罪ゆえに祝福を受けられない状態を象徴します。
さて、皆さんはヒワ(鶸)をご存知でしょうか?これはスズメ目アトリ科に属する鳥のグループ(亜科)のひとつの総称で、日本ではマヒワ、ウソ、カナリアなどを主に見ることが出来ます。このヒワ属の中に含まれる鳥の中に「ゴシキヒワ(ゴールドフィンチ)」という鳥がいます。この鳥はアザミの種子を食べる習性があり、イエスが受難によって罪を取り除き給うたことの象徴として、アザミとセットで描かれることが多いようです。今回は、そんなアザミとゴシキヒワの関係性からイタリア語名と意味について探っていきます。
アザミを意味するイタリア語とゴシキヒワ
冒頭でなぜゴシキヒワの名前を取り上げたかと言いますと、実はアザミのイタリア語名「cardo(カルド)」は切っても切れない関係性があったからです。
ヒワ属ゴシキヒワは学名を「カルドゥエーリス・カルドゥエーリス(Carduelis carduelis)」といいますが、これは古典ラテン語です。
「カルドゥエーリス」の語源は「Carduus(カルドゥウス)」もしくは「Cardus(カルドゥス)」から来ており、これはラテン語で野生種であるアザミ、もしくは栽培種である朝鮮アザミ(アーティチョークとも)を指しているのです(転じてラテン語では「蝶番」を意味する単語でもあります)。
ゴシキヒワの「カルドゥエーリス」とは「薊鳥」のような意味を持ち、これはゴシキヒワのアザミの種子を食べる習性を表しています。
そしてこれはイタリア語でも同じような成り立ちをしていて、イタリア語ではゴシキヒワを「cardellino(カルデッリーノ)」と言いますが、これは「cardo(カルド)」に由来しているというわけなのです。
因みに、スペインのプロヴァンスやイタリアで栽培されているカルドン(英語でcaldon)は近縁のチョウセンアザミの一種であるアーティチョークの野生種であり、イタリアのアプルッツォ州ではクリスマスの伝統的なスープとしてこれを使ったカルドーネという料理が食されています。
肉や野菜をたっぷり使ったブイヨンスープに肉団子とカルドン、チーズをたっぷり加えて作るスープです。
【まとめ】
まじまじとユダヤ・キリスト教の宗教画の数々を見てみると、赤い顔をしたゴシキヒワが複数書かれているものが確認できます。アザミといえば綿毛のような種子と棘のイメージばかりが先行しますが、その名前にはこんな関係性があったのですね。