私たちは、カサブランカやササユリ、ヤマユリなど大きな花弁をもつユリを多く見かけ、それがユリであると認識しています。しかしユリには小さな花をもつ種類もあります。ここではそんな小さくても可憐な花のユリをご紹介します。
ユリの種類の中で小さい花を咲かせるのはなんのユリ?
■チャイニーズチャイブ
(英語表記 : Allium tuberosum)
特長
花は淡い黄色や白で、多くのの小さな花が半球状に咲きます。私たちがお馴染みの野菜の“韮(ニラ)”のことです。栄養価が高く、豊富に含んでいるミネラルやビタミン、カロチンは私たちの体をパワーアップしてくれます。日本国内では、栃木県や高知県はニラの生育に適した環境であるため、主な産地となっています。
■ギボウシ
(英語表記 : Hosta)
特長
ギボウシとは、みなさんも見かけたことのある、橋の欄干の上にある玉ねぎのような形を飾り物です。このヤリ科のキボウシのつぼみがこの橋の飾り物に似ていることからその名前がつけられたそうです。小さな白色や青色の細長い花を咲かせるのが特長で、地域によっては、ウルイ、タキナ、ギンボなど、いろいろな呼び方があります。ちなみに漢字で表すと「擬宝珠(ギボウシ)」と表記します。
■ツバメオモト
(英語表記 : Clintonia udensis)
特長
この品種は、地域により絶滅危惧種に指定されている貴重なユリ科です。とても小さく約1cm程の白い花が、人がうつ向いているように咲きます。ちなみに漢字で表すと「燕万年青(ツバメオモト)」となります。その名前の由来には、このユリの実が熟すとき、それが燕(つばめ)の頭のように見えること、万年青(オモト)というスズラン科の植物に、このユリの葉がよく似ているということから名前がついたと言う諸説があります。
■スズラン
(英語表記 : lily of the valley )
特長
北海道を代表する銘花としてみなさんご存知かと思います。“蘭”の字がつきますが、実はユリ科の植物名なのです。鈴のような可愛らしい花を咲かせるので「鈴蘭(スズラン)」と言います。 スズランは日本が原産地ですが、観賞用に栽培されているものは、ヨーロッパ原産の “ドイツスズラン” と呼ばれる品種がほとんど出回っているようです。花の色は、白のほかに赤やピンク色などもあり、スズランは別名で、君影草(キミカゲソウ)・谷間の姫百合(タニマノヒメユリ)とも言われています。
■チゴユリ
(英語表記 : Disporum smilacinum Disporum)
特長
ツバメオモトと同様に、地域によっては絶滅危惧種に指定されている貴重な品種。ユリ科の中で最も小さな花で、その大きさは1㎝程です。花の色は白色ですが、花びら6枚の若干緑がかった美しい色合いで、うつむき加減に咲いて、可愛らしい様相を見せています。小さくて可愛らしいこの花の姿から “稚児(ちご)” に見立て、「稚児百合(チゴユリ)」という名前がついたそうです。
■ハナニラ
(英語表記 ; Ipheion uniflorum)
特長
星の形をしていて、紫と白の混合した綺麗で小さな花を咲かせています。ちなみに漢字では「花韮(ハナニラ)」と表記します。葉からは、ニラやネギのような香りがしたりして、葉が野菜の韮(ニラ)に似ていること、また花が美しいことから「花韮(ハナニラ)」という名前がついたそうです。南米大陸が原産地であり、中南米のメキシコからカリブ海を越えて、アルゼンチンにかけて広く分布する球根植物です。たいへん丈夫な花で、花もちと花つきは共に良く自然に繁殖していきます。
■キバナノアマナ
(英語表記 : Yellow Star-of-Bethlehem)
特長
食用になるユリ科の品種です。背丈は約20㎝という小柄な姿をしていて黄色い花を咲かせます。 日本では全国に分布しています。世界ではシベリアの東部・中国・ヨーロッパに広く分布している山野草です。ちなみに漢字で「黄花甘菜(キバナノアマナ)」と表記します。その理由とは、球根を煮て食べると甘みがあり、そして黄色い花が咲くことから、この名前が付けられたそうです。やわらかい若芽と若葉も食用になります。
■アマナ
(英語表記 : Amana edulis)
特長
白い花を咲かせるこの花は、チューリップに似ていて、晴天の日は花がよく開きますが、曇りの日には閉じてしまいます。
「アマナ(甘菜)」とは、球根を煮て食べると甘みがあることから、その名前が付けられたそうです。以前は食用で利用していましたが、現在は食用に利用されていません。白花以外に、花色が黄色のものが“黄花甘菜(キバナノアマナ)”というのが生息しています。
■ナルコユリ
(英語表記 : Narconon Lily)
花は列をなしたような感じで、緑がかった白い花が数個ずつぶら下がって咲きます。その花姿は、田や畑で鳥を追い払うための音を出す道具の鳴子(なるこ)に似ていることから、「鳴子百合(ナルコユリ)」という名前が付いたそうです。
■ショウジョウバカマ
(英語表記 : Japanese hyacinth)
特長
ショウジョウバカマという名前を皆さんも聞いたことがあるかもしれません。原産地は2つの国、日本と朝鮮半島です。日本では、沖縄を除く国土全体で傾斜地や、山地の小川沿いなど、やや湿った場所に生息しています。非常に背丈の低いユリ科の植物で、ピンク色の花を咲かせます。他に花色が白色のものも見かけます。
ショウジョウ(猩々)とは、中国の伝説上の動物で、猿のような顔と紅色の毛をもつ動物に似ていることをきっかけにして、花をショウジョウの頭の毛に、葉を袴(はかま)にそれぞれ見立てたことが、「ショウジョウバカマ(猩々袴)」の名前の由来だそうです。
【まとめ】
私たちはユリというと、ユリは大きな花を咲かせるというイメージが多いと思いますが、こうして小さな花をつける可憐なユリ科の品種も数多く生息していることがわかりました。この地球上には、多くの生物が共存しバランスよく生きています。しかし絶滅危惧のある動植物があることを決して忘れてはなりません。